あきらめない強い思い・・・IPOを経て東証1部上場、アジア展開に向かう
株式会社AMBITION 代表 清水 剛

不動産賃貸ビジネスでもIPOできることを証明したかった

不動産事業というと、土地やマンションなどの物件の売買を仲介したり、賃貸を仲介したり・・・イニシャルで高額なフィーを取得することがビジネスモデルになっている。その不動産事業の分野において、賃貸管理(サブリース)で安定的な収益を稼ぐ独自の「ストックビジネス」のモデルを打ち立てて、2007年9月の創業からわずか7年後の14年9月に東証マザーズ市場へ業界初のIPOを果たしたのが、AMBITIONの創業社長である清水剛氏だ。

「仲介のフィービジネスですと、景気や市況の影響を受けやすく、どうしても浮き沈みが激しくなってしまいます。その点、オーナーから預かったワンルームマンションなどの物件の賃貸管理であると、入居者さえ決まれば毎月安定した収益をあげることがきます。それには魅力的な物件を数多く集める必要があるのですが、当社では入居の成約率の高さをオーナーの皆さまから高く評価していただいていることで、デザイナーズマンションなどの優良物件を数多く揃えられています」

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そう語る清水社長の着眼点が鋭いところは、他の賃貸管理会社が仲介業者を通して入居者の募集をかけるのに対して、自ら賃貸仲介子会社である「アンビション・ルームピア」を立ち上げて、銀座、新宿、渋谷、池袋など都内ターミナル駅の近くに仲介店舗である「ルームピア」を14店舗も設けていることだ。それに加えて、資金・礼金のほかに火災保険料などもかからない「スーパーゼロプラン」を用意するなど、入居の敷居を低くする工夫も怠らない。その結果、空室率は1割を切っているというから驚く。

また、AMBITIONはオーナーに対して募集賃料の9割を5年間も保証する「かりあげ王」のプランを設けているが、それが可能なのも、そうした入居者を集める力があるから。そして、オーナーの信頼をさらに得やすくなり、いい物件がどんどん集ってくる好循環が生まれているわけだ。現在、AMBITIONが扱っている賃貸管理の物件の9割が東京23区内にあり、その大半が築8年以内の物件となっている。「東京は数少ない人口流入エリアで、そのなかでも23区内は入居者にとっても一番魅力的な場所です。そこに集中して物件を持っていることが、当社の一番の強みになっています」と清水社長はいう。

12年からは、買い取ったワンルームマンションなどの物件をリノベーションして売りに出すインベストメント事業をスタート。実はここでもルームピアを持っていることが大きな意味を持っている。「入居者が望んでいるフローリングだったり、洗面台だったり、入居希望者と直接取り引きしていることで移り変わる時代に合ったニーズを的確に摑み取ることができます。それをリノベーションに活かして、付加価値の高い物件にしてから売却するようにしています」と清水社長は話す。

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その清水社長にIPOの目的を尋ねると「まずメジャーになること。そして、ITとは関係のないリアルビジネス、それも絶対に無理だといわれていたベンチャー企業の賃貸ビジネスでもIPOが可能なことを証明したかったらです」との答えが返ってきた。とはいえ、08年のリーマンショック、11年の東日本大震災など07年の創業以降、数々の荒波がAMBITIONを襲ったはず。清水社長はどのようにして乗り越えてきたのだろう。

「IPOは創業時からの目標で、常にそれが実現したときのことをイメージしてきました。具体的にいうと、証券会社からもらった上場承認証のひな型のコピーを社長室に張り、そこに目標とする日付を入れて毎日見るようにしていました。その監査法人、そして幹事証券会社からは、ときに経営に関する厳しい意見が出てきて、侃々諤々の議論を戦わせたこともあります。しかし、大切なパートナーなので、自社のことは包み隠さすに話しました。結果、貴重な意見をもらうことができ、IPOも実現できたのだと思います」

AMBITIONは7月1日付で、横浜を中心に約1200戸の賃貸管理物件と5つの仲介店舗を持つVALORの株式を取得して、子会社化した。「横浜は23区内と並ぶポテンシャルの高いエリアですが、賃貸管理の募集を市場には出さず、相対で契約してしまう商習慣があります。そこで、地元のオーナーさんたちと強い信頼関係を築いている賃貸管理会社と手を組みたいと、以前から考えていました」と清水社長はいう。一方のVALORサイドからしてみたら、上場会社であるAMBITIONは社会的な信用があり、安心して子会社になることができたはずだ。

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入居希望者のニーズに沿った物件を調達し、それ直接仲介、売買する一気通貫した機能を持つAMBITIONのことを、清水社長は「不動産SPA」と称する。既にアパレル分野ではユニクロを展開するファーストリテイリングなどのSPA(製造小売り)が急成長しているが、1回仲介したり、売ったりして終わりにするのではなく、ライフステージに合わせて住み替えなどを提案する「ライフタイムバリュー戦略」でSPAの強みを発揮していく考えだ。その一環として、まだ住人のいるマンションをオーナーから購入して、住人が住んでいる間は賃貸契約を継続し、家族が増えたりして住人が転居する際には、自社の別な物件を紹介するイノベーション事業を開始。空いた物件はリノベーションしてから販売する。また、今年に入ってから経済成長著しいベトナムに子会社を設立し、現地でのサブリース事業の立ち上げの地固めを進めている。それらが実を結ぶのにつれて、東証1部上場も清水社長の視野に入ってくることだろう。

最後に清水社長は将来IPOを目指している若い起業家に対して、「会社を経営していると、世の中の動きをはじめ、自分が予想していた方向とは逆に動くことがよくあります。そういうときにこそ、自分の思いを強く持ってほしいのです。必ずその思いを持ち続ける限り、いつか実現するはずです」とアドバイスしてくれた。

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