成長の黄金律「 いい人材がいない。右腕が見つからない。」
エン・ジャパン株式会社 代表取締役会長 越智 通勝

「良い人材がいない」「ナンバー2がいない」―― 創業期の社長からこんな嘆きをひんぱんに聞く。私の回答はいつも一つだ。「いなくてよかったですね!」。理由は明快である。もし創業期から良い人材や優秀なナンバー2がいたらどうなるだろうか。創業期の会社は社長の器以上に成長しないものだが、彼らがいたら社長は手を抜き、怠けだすだろう。だから嘆く必要はない。

創業期に良い人材がいなければ社長はすべての仕事をやらざるをえず、オールマイティーになっていく。すべて自分で考えて、毎日が決断、決断、決断の繰り返し。その経験が自分を鍛え、成長させるのである。私もそうだった。私は三二歳のときにリクルート社の求人広告代理店をたった一人で創業し、社長業、営業、制作、事務、経理、掃除などすべてをこなし、二年間は休みなしで働いた。

マンションの一室からスタートしたので、当初はろくでもない社員しか採用できなかった。昼間から酒を飲んで夕方に帰社する社員、目先の金しか考えない社員など。

当時、関西地区でリクルート社の代理店は六社存在し、当社は七番目に設立された後発の代理店だった。その中で普通以下の社員を率いて、どう戦っていくか。経験を積みながらひとりで考え抜いた。どんなレベルの社員でもやっていけるように、自らの経験ノウハウをマニュアル化した。考え方、営業の仕方、顧客管理などの仕組みを作った。良い人材がいないからできたのだ。自ら考えざるを得なかったというのが本音である。

売上げは順調に伸びていったが、社員は入っては辞めの繰り返しだった。新卒の採用を決意したのは創業四年目、社員数が一五人のとき。癖のある中途社員よりも、新卒をゼロから採用して育てようと考えたのだ。それでも求める新卒は来ないし、すぐに辞めていく。散々悔しさを味わった。

この経験から、良い人材に入社してもらうために、どういう会社にしたらいいかという目標が明確になった。費用も手間もかかるが、できれば新卒採用を早期から始めることをお勧めする。ただし、新卒の早期戦力化のために、前述の仕組み化も同時に手がけてほしい。新卒者は中途入社者より、比較的定着率が高く、当社では組織拡大につながっていった。
その結果、大阪に本社を置いていた当社は、創業から一〇年かけて、関西地区でナンバーワンの代理店になることができた。

創業期に造反劇はつきもの
この危機を乗り越えてこそ、一人前の経営者になれる。

創業六年目。年商一一億円、社員数が八〇人の時期には造反劇が起きた。新卒の採用経費に一〇〇〇万円以上を投じてきたが、これに反発する社員が現れたのだ。「そんな金があるなら、給料を上げてくれ」と。私は「いつまで君らが新規開拓を続けるのか? 若い子を育てていかないと会社の将来はないよ」と諭したが、ナンバー4の社員以下五人が退職。目先は痛手を被ったが、それをきっかけに、業績は飛躍的に伸びていった。目先のことしか考えない社員が辞めたことで、残った社員が一致団結したからだ。

こうした出来事に直面しても、社長は感傷的になったり、へこたれたりしてはいけない。私は食欲不振にも睡眠不足にもならなかった。そんなたくましさが社長には必要だし、社員に裏切られることで免疫力もつく。創業期に造反劇はよく起こるものだが、これを経験した社長は一段と大きくなれる。

創業期の社長に問われることは、たとえ全社員が退職しても、「もう一度ひとりで再起してやるぞ!」という気概だ。私の場合は社員数が一〇〇〇人ぐらいの規模まで、そう考えていた。再成長期の今を乗り切るには、器をさらに大きくする必要を感じている。