世界の外食市場で1000店舗規模の展開目指す
株式会社ダイニングイノベーション 代表取締役社長 西山 知義

創業から2年半で100店舗突破の急成長

焼肉レストラン「牛角」をはじめ次々と外食の新業態を展開してきたレインズインターナショナルの創業者である西山知義氏が、2012年12月に〝第2創業〟したのが「ダイニングイノベーション」だ。社長に就いた西山氏は持ち前の辣腕経営者ぶりを如何なく発揮し、創業からわずか約2年半の今年8月、グループの外食店舗を100店の大台に乗せた。レインズインターナショナル時代に成し遂げた「7年で1000店舗展開」のときよりも早いペースという。何が驚異のスピード展開の原動力となっているのだろう。

「焼き鳥、ラーメン、焼肉などいろいろな業態で展開していますが、どれも今までにない新しい価値を付加することで、大勢のお客さまに支持されているのだと思います。たとえば、『やきとり家すみれ』は男性客がメインの従来の焼き鳥店とは一線を画して、まず女性やファミリーという新しい客層をメインのターゲットにすることを明確に打ち出しました。そして、お客さま目線で店舗の内外装の設計やメニューづくりをスタートさせ、そこに1つひとつ新しい価値を付加してきたのです」

dining-innovation-nisiyama2

そう語る西山社長がやきとり家すみれで具体的に取り組んだのが、家族で落ち着いて食事を楽しめる半個室の併設だったり、女性が融け込めるカジュアルな雰囲気のインテリアの積極的な導入だった。また、「大山とり」を使った焼き鳥の串物に力を入れるのはもちろんのこと、女性や子供が好む、前菜、サラダ、〆物、デザートなども充実させ、ターゲットとする客層に合わせたメニューを構築してきた。そうした結果、100店大台乗せの時点で、すみれは45店を占め、グループ内の業態のなかでも一番の〝出世頭〟となっているのだ。

現在、ダイニングイノベーショングループは、「やきとり家すみれ」を展開する「すみれ」のほか、若い男性に人気の「野郎ラーメン」を主軸とする「Team86」、高級焼肉店「焼肉Kintan」「星遊山」和牛割烹「金舌」を運営する「カルネヴァーレ」などの国内5社に加えて、米国、英国、シンガポール、インドネシアなど海外に設立した7社からなる。100店の内77店を占める国内展開については、業態に応じて差異があるものの、全体でならすと直営とフランチャイズ(FC)の比率は半々になる。

「お客さまの事前期待に応えることは当然のこと。牛角創業時には、その事前期待を大きく上回るサービスで『感動』をお客さまに提供することを目指しました。FCビジネスでの一番のポイントは、本部がしっかりした志や目標を持ち、決してブレないことだと考えています」
その〝感動創造の経営〟を実践していく上で、西山社長が徹底して行っているのは日々の店舗管理だ。具体的な行動計画に落とし込み、目標に対する日々の行動計画の管理を行っていく。

やきとり屋すみれをはじめダイニングイノベーションの各業態の店舗の現場でも、こうしたノウハウをフルに活用することで、FCオーナーの信頼を勝ち取り、同時に新たな感動の創造を実現させ、急成長の軌道に乗せているのは想像に難しくない。

dining-innovation-nisiyama3

綜合的な日本食の提供が成功の秘訣

西山知義社長が〝第2創業〟したダイニングイノベーションで新たに力を入れているのが海外展開だ。今年8月に記念すべきグループ100店舗目となったのは、シンガポールにあるしゃぶしゃぶのお店「しゃぶ里」のラッフルズシティー店だった。この時点で100店の内23店が海外の店舗なのだが、西山社長は「しゃぶしゃぶ、焼肉、ラーメンなどの日本食で、将来は1000店舗、2000店舗の規模で海外展開したいと考えています」という。

しゃぶ里は特にインドネシアで好調で、同国での1号店となったパシフィックプレイス店は満席状態が連日続き、毎月平均で約3000万円を売り上げ、コンスタントに高い利益率を維持している。一番人気は日本円で2600円前後の食べ放題コースで、現地の物価水準からすると決して安くはない。しかし、憧れの日本食の1つであるしゃぶしゃぶが「1人1鍋方式」で楽しめるうえに、出汁は「こんぶ出汁」「鶏白湯コラーゲン」など5種類から選択可能で、ソフトドリンクも飲み放題なことなどが受けている。既に同国には5店が出店し、年末までには8店に増えるそうだ。

dining-innovation-nisiyama4

「日本食で海外展開を成功させようとしたら、単品で勝負してはいけません。たとえば、アジア各国には現地の麺文化があり、それらと比べると日本のラーメンはどうしても割高になります。しかし、それでもお店に来ていただけるのは、ラーメン以外に唐揚げや天ぷらなどいろいろオーダーできて、日本の食文化が思う存分楽しめるからなのです。それと、その国の一番の繁華街に出店して成功させ、十分に好感度を高めてから多店舗化していくセオリーを厳守することも大切です」

海外展開を考えている外食企業の経営者が大勢いるはず。西山社長の言葉はぜひ頭のなかに叩き込んでおく必要があるだろう。
その西山社長が国内事業に目を転じたときの中期的な目標が、前編で紹介した「すみれ」「Team86」、「カルネヴァーレ」などのグループ企業をさらに育て、IPO(株式上場)させていくこと。ダイニングイノベーションは各社に必要な資金を出資したり貸し付けている。同時に経営指導も行なっており、ファンドだけでなくインキュベータとしての役割を担っている。「18年からIPOを順次実現させていきたいと考えています」と西山社長は話す。

そうした外食マーケットにおける〝起業の達人〟である西山社長に、起業の成功の秘訣を尋ねると、次のように答えてくれた。

「ほとんどの人は、『このコンセプトであれば業態に新しい価値を付加できる』と考えて起業します。そして、1店舗目で手ごたえを感じれば、多店舗化を目指すようになるのです。しかし、そのコンセプトが本当に多店舗化にマッチしているかどうかは分かりません。逆に私は初めから300店なり500店なりの多店舗化を前提に、新しいコンセプトを考え始めます。ですから、スピーディーに多店舗化を進めることができるのです」

dining-innovation-nisiyama6

これまで西山社長は、焼肉、焼き鳥、ラーメンなど、目標300店舗ならその展開が十分可能な、既に市場が確立しているところに新しい価値を付加し、自らのポジションを切り拓いてきた。一時流行したものの、すぐに姿を消してしまう単なる流行モノには、決して手を出さない。「どんな業態も、成長期、成熟期、衰退期があります。その衰退期にどの位の水準で下げ止まるのか、市場が確立している分野であれば、ある程度読めるからです」とも西山社長はいう。

西山社長の2015年度の目標は国内外合わせて200店舗体制の確立。急成長するダイニングイノベーションから益々目が離せそうにない。また、そうしていくなかで学ぶべき点が多いことに、改めて気づかされるはずだ。