日本の住宅産業を欧米並みに進化させる」が起業の目的 中小工務店のビジネスを支援、地方経済の活性化にも寄与
ハイアス・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役社長 濵村聖一

中小工務店にビジネスモデルパッケージとアフターケアを提供

ハイアス・アンド・カンパニー(以下「ハイアス」)は、住宅関連に特化してビジネスサポート、経営コンサルティングといったサービスを行う企業だ。クライアントの要望に応じて、業態転換や経営効率化といったパッケージ型コンサル、不動産相続相談支援といったさまざまなメニューを提供している。そうしたユニークなサービス内容によって、地方の中小工務店や不動産会社を中心に1200社以上と会員契約を交わすまでに成長、2016年4月には東証マザーズ上場も果たした。

同社は2005年、濵村聖一社長が創業した。濵村社長はもともと日本エル・シー・エー(旧ベンチャー・リンクの親会社、以下「LCA」)で、経営コンサルティングを手がけていた。「95年ごろから住宅業界を担当しました。その頃の売上高上位10社の住宅メーカーの大半と、お付き合いがありましたね。LCAの中でも住宅部門は利益が大きく、2000年にLCAがナスダック・ジャパンに上場したのに貢献しました」と胸を張る。LCAは新しいビジネスモデルをクライアントに提案して、それを実現させ、対価を得るという新タイプのコンサル企業を目指していた濵村社長いわく、「将来性の高い事業モデル」だった。しかし、グループが経営難に陥った時期があり、「LCAでは新タイプの事業を実現しにくくなり、独立して自分で立ち上げることにしました。LCAの事業モデルをブラッシュアップする形で、住宅関連に水平展開したのです」と、濵村社長は明かす。住宅の市場は大きいが、住宅産業を支えているのは家族経営などの中小工務店が圧倒的に多い。IT化も進んでおらず、PCさえ十分に使いこなせていないという。逆にいえば、そうした会社はコンサルによって経営を効率化し、成長できる余地が大きいのだ。

「経営戦略策定、IT化、人材育成といったテーマごとのコンサルは一般的になっていますが、ビジネスモデル一式をパッケージとして作り込み、クライアントに導入しやすい形にしたのがLCAでした。当社はさらに、ビジネスモデルを導入した後も、クライアントの経営者を指導したり、業務を支援したりするアフターケアを拡充したのです。そうしたスタイルのコンサルは、日本初だったのではないでしょうか」。

住宅産業による地方創生と日本国民の資産形成促進をめざして

濵村社長が住宅産業をターゲットに起業を志した理由はそれだけではない。「日本のために、日本の住宅産業のあり方を変えたい」という熱い思いがあったからだ。

ハイアスの目的の一つは住宅産業によって地方創生すること。住宅メーカーや工務店といった地場の建設業は地域産業の核であるケースが多い。地方経済の疲弊が問題視されて久しいが、地方の建設業の衰退が大きな影響を及ぼしている。ということは、地方の住宅メーカーや工務店が活性化されれば、地方経済にも活気が戻ることが期待できるのだ。

「日本の住宅産業は現在、大手住宅メーカーがリードしており、地方の中小工務店の多くがその傘下のビルダーの地位に甘んじています。しかし、大手住宅メーカーの本社は東京及び大阪なので、地方にそれほどお金が落ちない仕組みになっています。中小工務店が大きく住宅ビジネスを展開できる仕組みにすれば、それだけ地方経済も潤うことになるわけです」。

もう一つの目的は日本国民の資産形成を促進すること。いうまでもなく、国民の大半にとって、住宅は人生で最大の買い物だ。ところが、一戸建ての木造住宅の場合、15~20年で価値が約10分の1に下がってしまう。だから、国民は資産が増えず、担保能力も失ってしまうので、新たな消費や投資ができない。日本経済全体にとっても大きなマイナスになっているのだ。一方、欧米では、巨大な中古住宅マーケットが存在し、住宅の資産価値は日本のように目減りしない。住宅のオーナーは持ち家を活用し、新たな投資で資産を増やしたり、生活を豊かにしたりできるのだ。LCA時代、欧米の住宅事情を調査した濵村社長は、日本との違いを目の当たりにし、愕然としたという。

「日本の住宅が、居住機能があるにもかかわらず価値が下がってしまうのは、市場のニーズに適していないからです。つまり、コストパフォーマンスが高い“住みたい中古住宅”を安定供給できれば、そこに新しい市場が生まれ、住宅の資産価値を保つことにつながると考えたのです」。

濵村社長は、ミサワホームの創業者である三澤千代治氏とも親交が深かった。そこで、自身の事業計画について三澤氏に相談したところ、「あなたのいうとおり、日本の住宅の産業構造は変えるべきだ。私も応援しよう」といって出資し、経営顧問も紹介してくれた。それに意を強くした濵村社長は、いよいよハイアスを旗揚げすることになったのだ。

独フライブルグをモデルに省エネ住宅「アール・プラス・ハウス」開発

現在、ハイアスの主力事業となっているのが、「アール・プラス・ハウス(R+house)」という注文住宅建築システム。同社の売上高の約半分を占めている。R+houseは、同社が研究者などと共同開発した高断熱・高気密の住宅で、耐久性が高く、冷暖房もあまり使わなくていい。省エネで環境にやさしく、維持費もかからない。そのうえ、建材の直接調達、設計や建築のルール化による短期間の工事などによって、建設費は「一般の注文住宅に比べて、20~30%も安いのが特徴」(濵村社長)という。しかも、住宅の設計は提携しているアトリエ建築士事務所が担当しており、デザイン性にも優れている。つまり、住宅オーナーにとっては買い入れやすく、機能性にもデザイン性にも優れているので、先々高値で売りやすいというメリットがあるわけだ。

濵村社長がR+house事業を思いついたのは、09年に「欧州の省エネの総本山」とも呼ばれるドイツのフライブルグを視察したのがきっかけだという。「フライブルグは、太陽光発電やコ・ジェネレーションシステムが整っていて、電力をほかの町に売るほど余っているんです。フライブルグで知り合った方と共同研究を行い、省エネ住宅をローコストで大量供給できるR+houseのシステムを開発したのです」。

R+houseは同社の会員である工務店などが建設する。それらの工務店が住宅オーナーから受注するほか、同社の会員である不動産会社が住宅オーナーに紹介するケースも少なくない。リリースから5年以上が経ち現在、年間建築棟数は約1000棟に達するが、「3~4年後には数倍に成長させたいですね。そうすれば、大手住宅メーカーの住宅シリーズと建築棟数で肩を並べ、全国ブランドとして価値が高まるでしょう」と、濵村社長は意気込む。

さらに、R+houseの廉価版ともいえる住宅建設システム「アーキテクチャル・デザイナーズ・マーケット(ADM)」を昨秋から本格リリースした。住宅オーナーが一戸建てを取得する平均年齢は現在、約37歳前後なのだが、その年齢層の所得水準が下がっているため、「住宅取得適齢期」の人たちに手の届きやすい低価格帯の住宅シリーズを用意したわけだ。規格住宅なので、不動産会社から引っ張り凧の人気だという。

「ADMはいわば、レディーメイドの住宅。設計を自由に変更できるR+houseに比べて、規格がある程度決まっています。それで、建物の価格帯が1800万~2400万円のR+houseに比べて、平均約1500万円とリーズナブルなのです。ただし、性能はR+houseに遜色ないですし、500~600種類のデザインから、自分の好きなものを選べます」。

日本の住宅産業変革のための様々な事業展開

一方、日本の住宅産業を変えるには、「エンドユーザーの情報レベルを変えることが重要」(濵村社長)との考えから、住宅購入予定の個人顧客向けに、住宅・不動産に関する専門知識を伝授する勉強会を3年前から熊本で始めた。「個人顧客の知識レベルが上がり、住宅を見る目が肥えれば、住宅産業の側も供給する住宅のレベルを上げざるをえなくなるからです」。また、全国住宅物件の70~80%をカバーできるデータベースの運用試験にも4年前から着手している。「現在、全国住宅物件の情報は多くても30~40%程度しかフォローできていません。新データベースが軌道に乗れば、ワンストップで住宅情報が得られるようになり、住宅流通の適正化・効率化が進むでしょう」と濵村社長は期待する。

濵村社長は、「日本の住宅産業は欧米よりも15~20年遅れています。急いで海外をキャッチアップしなければなりません」と力説する。同社では一戸建ての管理ビジネスがないことに着目、今後は地域の社会インフラ、セキュリティ体制などを総合的に管理し、住宅地全体の価値を上げる「タウンマネジメント事業」にも乗り出す方針だ。そのほか、「REIT(不動産投資信託)のような大口の不動産ファンドではなく、住宅を投資対象とした小口の不動産ファンドを設け、一般投資家からも住宅産業に資金を集める仕組みを構築したいですね。また、インバウンドの観光客を呼び込み、日本の観光資源を活用するため、民泊の全国システムも整備したい」と夢は尽きない。「初志は貫徹すべし」をモットーとしてきた濵村社長は、「日本の住宅産業を変える新しいチャレンジを、まだまだ続けたいですね」と意気軒高だ。