個人のパソコン、デジタル機器の悩み事をワンストップで解消 生活サポートサービス会社からの受託業務で成長
日本PCサービス株式会社 代表取締役社長 家喜 信行

パソコンなどのICT機器は、今やあらゆる家庭や個人事業所に普及しているといっても過言ではないだろう。しかし、個人ユーザーの場合、ハイテク機器であるがゆえに、ICTに詳しい人以外は使い方がよくわからなかったり、ウイルス感染や故障などのトラブルが起こったりすると、たちまちお手上げになり、途方に暮れることになる。そうしたユーザーの悩み事の解消、ICT機器のメンテナンスへのニーズも高まる一方で、ICT機器のサポートサービスの専業大手として成長しているのが、日本PCサービスだ。パソコン、デジタル機器のトラブル解消、修理、各種設定、使い方のレッスンなど、さまざまなサービスを提供している。

同社が設立されたのは2001年で、パソコンサービス事業をスタートしたのは03年だ。しかし、創業者である家喜信行社長は、「会社を作ったのは成り行きで、そのときはパソコンサービスをやろうと考えていたわけではありませんでした」と明かす。

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家喜社長は、もともと自動車関係のパッケージソフトを販売する会社で、大阪営業所長を任されていた。「その会社の社長を目指して、頑張っていました。営業成績はよかったのですが、その当時の社長と経営方針が合わず、転職を検討していた際に、上司を困らせてしまうと思い直し、転職を止め起業しました。」(家喜社長) 起業した家喜社長は、新規ビジネスのヒントを見つけようと、知り合いの経営者を訪ね歩いたところ、「横浜方面では、パソコンのサポートや引き取りのビジネスが伸びていると耳にしたんです。パソコンなら、自身が好きだったこともありますが、前職で顧客訪問をしていると使い方が分からないと言った声を聴いていて、サポートすると喜んでもらえたこともヒントになりました。

そこで、パソコンやデジタル機器にまつわるサービス事業が有望ではないかと目をつけました」。

パソコンやデジタル機器の悩み事では、まずメーカーに問い合わせるのが普通だ。しかし、メーカーは、保証条件以外のサービスは受け付けないことが多い。ハードでなくソフトの問題であれば、「ソフトメーカーさんにご連絡ください」とユーザーをたらい回しにしてしまうこともある。「パソコンやデジタル機器の悩み事をワンストップで解消するサービスは、必ずニーズがあると判断しました。前にいた会社では、車のメンテナンスをメーカー問わずトータルで行う事業を行っていましたが、弊社では家の中にあるパソコンを含めたデジタル機器のトータルサポート事業を立ち上げたわけです」。

パソコン、デジタル機器の市場は、BtoBも、BtoCもあるわけだが、家喜社長は個人をメーンターゲットにすることにした。

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「自動車関係のパッケージソフトの営業をしていたとき、パソコンが数台しかない整備工場などの中小企業もクライアントだったのですが、そこの人たちがパソコンのメンテナンスに苦労するのを知っていました。BtoCの単価は限られているのですが、マーケットは大きい。それに、BtoBは、クライアントからの値引き要求も厳しく、支払いサイトも長いのですが、BtoCは、値引きが少なくてすみ、キャッシュが入るという利点もあります」

ところが、フリーペーパーに広告を載せても、大量のチラシを撒いても、知名度はなかなか上がらない。背に腹は代えられないと、パソコンのメーカーや販売店を通じて、サポートサービスを提供しようとした。言わばBtoBtoCの、頭の“Bto”の部分を請け負う戦略だ。しかし、メーカーや販売店に既存のサービス業者がいたりして、食い込むのが難しかった。そこで、家喜社長は、水回りやカギのトラブルなどに対応する生活サポートサービス業者と組むことを考えた。たまたま生活サポートサービス大手であるジャパンベストレスキューシステム(JBR)の榊原暢宏社長の知遇を得、同社のパソコン関係のサポートサービス業務を受託したことが、飛躍する転機となったのだ。

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名証上場で信用度と知名度がアップ、事業拡大に向け攻勢 ホームエレクトロニクス関係企業を積極的にM&A

JBRからパソコン関係のサポートサービス業務を受託したあと、NHKの情報番組で事業内容が紹介されたことで、一挙に全国に知られるようになり、東芝、ヨドバシカメラといった大口クライアントの獲得につながった。

08年には、社名を「マネージメントクリエイティブ」から、現在の「日本PCサービス」に変更した。

「メーカーのコールセンターでは、自社で対応できないトラブルの場合、当社に紹介してくれるようになっていました。パソコンの取扱い説明書にも、当社の社名と連絡先が記載されていました。しかし、『待てよ』と思ったんです。受託先が増えれば、A社でも、B社でも、当社の名前をユーザーに紹介するわけです。それなら、日本PCサービスという社名のほうがわかりやすいし、メーカーが対応できないトラブルを引き受ける会社として、世間にも認知されるのではないかと考えたのです」

14年には名証セントレックス上場も果たした。上場はBtoCのパソコンのサポートサービスでは、初の快挙だという。実は、09年に上場を計画していたのだが、リーマンショックのあおりで頓挫していた。そのリベンジだった。IPOにも、企業の信用度、知名度を上げる狙いがあったと、家喜社長は説明する。

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「パソコンのサポートサービスは、手間がかかって利益を生みにくいので、メーカーや販売店は、アウトソーシングで派遣社員や業務委託の個人事業者に任せるのが主流。しかし、当社は、正社員である専門のエンジニアが対応するので、技術力には自信を持っているんです。その技術力と接客対応で顧客満足は高まり、さらに依頼先は紹介手数料として収益となるからメリットは大きい。しかし、日本のビジネス社会では、企業の事業規模や信用が重んじられ、技術力が正当に評価されにくい。上場してからは、取引先への営業がスムーズになって、メリットを大いに感じているところです」

現在、事業拡大に向けて攻勢をかけており、M&Aによって4社を傘下に収めている。

「パソコンやスマートフォン、デジタル家電、ロボットといったホームエレクトロニクスには、電気修理の技術が欠かせません。そこで、昨年には熊本の電気修理会社を買収しました。また、当社は年間約13万件以上のユーザーを訪問しているのですが、このネットワークを活用すれば、新しいビジネスにつなげることができます。そのため、コールセンターを自社で運営し、既存のユーザーに営業をかけています。一方、労働集約型のサポートサービスとは違う事業も、ポートフォリオに加えたいと考え、中古のパソコンやスマホのネット販売会社も買いました。そのほか、海外事業にも乗り出すため、法規制の関係もあってシンガポールの現地法人を買収しました」

M&Aは機会があれば、今後も積極的に行う方針だ。家喜社長は次のように力説する。

「パソコン関係やICT機器のネットワーク関係の企業は、M&Aの対象として可能性が大きいでしょう。当社の経営インフラとのシナジーが発揮しやすいからです。例えば、ハウスクリーニングの会社。その会社のユーザーを当社に紹介したり、当社のユーザーをその会社に紹介したりすることができます。宣伝もマーケティングも効率化できるでしょう。

さらに、クリニック向けの医療機器関係の会社なども関心があります。住宅向けだけでなく、個人事業所向けのICT機器のサポートサービスにも展開していきたいですね」