“成約ありき”主義を排除して、 経営課題を解決するM&Aに徹する
かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社 代表取締役社長 佐武 伸

着手金・月額報酬・中間報酬を請求しない完全成功報酬体系

かえでファイナンシャルアドバイザリーが取り組むM&Aアドバイザリー業務は、中堅中小のオーナー企業の売却に特化している。

IPOをめざしていたアパレル通販会社の社長が自分の経営能力に限界を感じて、上場カタログ通販会社に株式を譲渡した案件。ゲーム開発会社の社長がクリエーター業務に専念する目的で、家庭・携帯用ゲーム開発の上場企業に株式を譲渡し、自身は開発責任者として在籍しつづけ経営から解放された案件。あるいは、数十億円の負債を抱えていた一般産業廃棄物処理企業の再生スキームを策定し、異業種を経営しているオーナーをスポンサーに現経営陣によるMBOで新会社を設立して、事業を譲渡した案件などを手がけた。

同社の特徴は3つ挙げられる。第1に、売却側オーナーに対して、税金対策、相続税対策、資産運用など売却で得たキャッシュの活用方法などもサポートしているファミリービジネス総合コンサルティングをしていること。クロージングをもってサービスを終えず、税理士法人、監査法人などを傘下にもつ「かえでグループ」のサービス機能も付加し、対応している。

kaede-satake-1-1

第2に、報酬体系が完全成功報酬であること。通常、途中段階で支払う着手金、月額報酬、中間報酬を請求してしない。その理由について、社長の佐武伸氏(公認会計士・税理士)は「中小企業のオーナーには、成約できるかどうか不透明な段階でフィーを支払うことに抵抗をもつ人が多い。完全成功報酬体系にすることにより、安心して当社を利用していただいている」と話す。

だが、成約に至らなければ持ち出しで終わるのではないか。「それで稼げるのか?」とよく尋ねられるというが、「買い手がつかない業種など明らかに成約が難しい企業は扱わない。買い手がつくと確信できる企業だけを対象にしている」(佐武氏)。成功の可能性を入口の段階で深く読み込んでいるところに、同社のビジネスモデルのノウハウがありそうだ。

買い手に多いのは異業種、投資ファンド

第3に、経営課題の解決をめざすM&Aを実施していること。売却側の経営課題を抽出し、課題を解決してくれる買い手に仲介しているのだ。佐武氏は「当社の方針は成約ありきではない。何でもかんでも仲介して、クロージングしてお終いというビジネスはやらない」と強調する。キャッシュ活用法のサポートもそうだが、売却後のプロセスも組み込んで長期的に関与している。

kaede-satake-1-2

経営課題の解決では、異業種のリソースを注入したほうがイノベーション、新陳代謝を引き起こして、新たな発展段階に進みやすい。そこで買い手には異業種や投資ファンドが多い。とくに投資ファンドは事業の展開スピードが速いため、引退するまでに事業を形にしたいと考えるオーナーには、売却先に事業会社よりもファンドを選ぶケースが増えている。

こうした特徴を集約したのが事業再生型M&Aである。一般にM&Aアドバイザリー会社は、手間もかかるうえにフィーも得にくい赤字企業や債務超過企業を対象としないが、同社は引き受けている。弁護士や公的支援機関などと組んで銀行と交渉し、収益の見込める事業を分離・譲渡し、旧会社は清算するなど最終着地に至るまで主導するという。

売却側の強みを見つけ出し、事業計画を策定する

同社の取扱案件のうち、売却目的で増えているのは、海外展開に向けた経営資源の確保である。国内市場では限界があるため海外に展開したいが、単独では難しく、自分の夢をかなえてくれる有力企業の傘下で長年の目標を実現したい。そう望むオーナーが多くの業種で増えた。売却後に、オーナーが引き続き社長として関与しつづけるケースもある。

売却側オーナーの年齢が若くなったことも昨今の傾向だ。親族内に後継者候補がいなければ30代のうちからM&Aを検討し、たとえば自分の経営能力では年商10億円が限界だと認識すれば、早くも30代で大手への売却を考えるオーナーもいる。佐武氏は「年齢にかかわらず、イグジット(出口戦略)を意識するオーナーが増えた」と見るが、一方で、自社の強みを把握していないオーナーが多いという。

「オーナーは自社の課題は把握しているが、意外に強みには気づいていない。例えば、大手企業や役所との取引口座をもっていても、長年の取り引きで当たり前のことと感じており、それが強みであることに気づいていないのだ。ベンチャーにとっては宝の山という会社もある」。

kaede-satake-2-1

同社は第三者の目線で強みを見つけ出し、経営課題を認識して、オーナーが会社の将来をどうしたいのか、目標を共有して、事業計画を策定している。強みと課題を明確にし、目標や方向性を確認できれば、ベストなパートナーを適切な条件で見つけることが可能となる。

社長が交渉に出席すれば買収側の熱意が伝わる

買収側に対しては、企業規模にもよるが、交渉の場にできるだけトップに出席してもらうことを要請している。経営企画担当役員止まりでなく、社長が登場すれば熱意が伝わるからだ。売却側オーナーが知りたいのは、ひとえに、なぜ自社に興味をもったのか。その回答を迫真のセリフで語れるのは社長である。

とくに上場企業でも創業社長の場合、個人保証や資金繰りの辛酸を舐めているだけに、オーナーの心情を理解でき、交渉の落とし所も心得ているという。

「創業社長が“御社のこんな点が好きになった!こういうゴールをめざしませんか!?うちと組めば達成にできますよ!”というようにアプローチするので、会話が弾む。初対面でも1時間もすれば握手をし合って、提携が合意してしまう」。

kaede-satake-2-2

ところが、これは経営企画担当役員などに見られがちな傾向なのだが、財務内容の問題点をあれこれ指摘して理由を問い質したりすると、売却側の意欲が萎え、M&Aの魅力が減じてしまう。だから佐武氏は「トップ会談では数字の話をしないようにと釘を刺している」。

こうして、かえでファイナンシャルアドバイザリーは、中堅中小企業の活路を見出している。今後はさらに一段と踏み込んだサービスを提供する意向だ。オーナーを公私にわたってサポートし、海外展開、子息の海外留学なども支援しているという。