社員の半数以上が流通出身者 現場力で売場改善から企業再生へ
株式会社メディアフラッグ 代表取締役社長 福井 康夫

先発企業との差別化へ
SV視点でのMS手法を開発

1990年代半ば以降、多くのコンサルティング会社や調査会社が、こぞってミステリーショッパー(覆面調査・MS)に参入した。以来、一定の定着は見たものの、当初に目論んでいたような規模のビジネスには至っていない。

「MSで最後発の事業者」と社長の福井康夫氏が自称するメディアフラッグの設立は2004年である。同社は先発組を追い抜くようにして、12年に東証マザーズに上場したが、何が原動力になったのだろうか。

それは福井氏のキャリアに由来する。福井氏は1991年に早稲田大学法学部を卒業して旧三和銀行に入行し、4年後、セブン・イレブン・ジャパンに転じた。店長、スーパーバイザーを経て、情報システム本部で店舗システム推進と新規事業の立ち上げを担当し、同社には8年在籍した。

04年当時、ほとんどのMSがカスタマー視点によるアンケートの延長のような調査だったが、同社はSV視点でのMS手法を開発した。着眼の源はセブン・イレブンでの経験だった。福井氏は述懐する。

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「セブン・イレブンの強さはITと『OFC』と呼ぶSVの店舗指導にあるが、大量のSVを雇用できるのは大手コンビニぐらいで、多くのチェーン店はSVの戦力化に苦労している。この現状を見て、私はSVをアウトソーシングして、複数のチェーンを兼任できる仕組みをつくりたかった。そこで研究を進めているうちにMSを知り、SV代行サービスに組み立てた」

福井氏が開発したのは、どのチェーンにも使える汎用性のある調査項目ではなく、チェーンごとに理念や経営戦略などを盛り込んで、店舗評価や人事考課に反映させる仕組みである。しかも、調査対象の店長が結果を見て「なるほど!」「この調査結果を店舗運営に活用しよう!」と納得できる水準に仕上げた。

MSのリピーターが増え続け、巡回店舗数は35万店舗

こうして開発したMS手法は競争力を発揮して、飲食店や小売店に加え、銀行にも導入が進み、さらにリピーターを増やして同社の成長を牽引したのである。巡回店舗数は13年11万店、14年14万店、15年はじつに35万店に拡大した。

SV視点でのMSを確立できたのは、同社の社員の半数以上が流通業界出身者で、現場に精通していること。これが強みになったのだ。

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だが、いまやMSをメインとした流通支援事業は、売上高の10%強を占めるにすぎない。流通ノウハウをベースに店舗関連事業を派生させ、14年12月期の売上構成比は、スーパーなどの営業支援事業が50%、和菓子製造販売が26%、店舗運営事業が11%という内訳だった。

メインの営業支援は消費財メーカーをクライアントに、おもにメディアフラッグ株主の博報堂と組んで、TVCMと連動させたスーパーやドラッグストアなどの販売促進を手がけている。その担い手が北海道から沖縄まで約20万人を配置する「メディアクルー」で、適性によって流通支援を兼務、あるいはどちらかを担当している。メディアクルーへの教育は各エリアに配置したSVが担当し、さらに年3~4回の集合研修を実施するなどして質の向上を図っている。

セブン・イレブン商品部出身者を投入して収支改善

和菓子製造販売は企業再生事業として取り組んでいる。この事業は、同社が次の発展段階に進むための、いわば試金石でもある。

同社の通期業績は14年12月期に売上高69億3500万円、経常利益3億円。15年12月期にはそれぞれ80億円、3億6000万円を見込んでいるが、福井氏は「いまの事業では年商100億円が限界だと思う。株主の期待に応えるには次の成長を見込めるシナリオが必要で、企業再生事業に着手した」と意図を述べる。

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13年に第一号案件として、和菓子店「十勝甘納豆本舗」「菓心たちばな」を運営する十勝たちばな(埼玉県川口市)を買収した。セブン・イレブン商品部出身者を派遣し、数値管理の徹底、商品の絞り込み、理念の浸透などを通して17年には黒字化させる計画だ。企業再生事業にも流通ノウハウが投入され、同社の強みが活用されている。

「地方には経営不振に陥っている小売店や飲食店チェーンが多い。十勝たちばなの再生を成功させたら、どんどん手がけていきたい」(福井氏)

「起業するなら若いときのほうがよい」

68年生まれの福井氏は今年46歳になる。同社を設立したのは35歳のときだった。設立以来3期連続赤字で、累積損失は約1億5000万円、借入金は2億円近くに膨らみ、経営幹部が次々に退職していった。この苦境を乗り切れたのは、先発企業と一線を画すMSのヒットや、京セラ創業者・稲盛和夫氏の盛和塾で学んだ「経営理念の大切さ」が大きいというが、もうひとつ、福井氏の年齢にも起因するのではないか。

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日本政策金融公庫総合研究所が12年に実施した起業時の年代別調査によると「予想月商の達成率」「黒字基調」とも、34歳以下、35~54歳、55歳以上の順に高かった。起業年齢が若いほうが成功率は高いといえるのだ。福井氏も若いうちに起業することを勧めている。

「私はけっして若いとはいえない年齢で起業したが、起業するなら若いときのほうがよいと思う。40代で起業して失敗したら挽回するのが大変だが、20代の失敗なら世間も再チャレンジの機会を与えてくれる」

経営者人材としての伸び代も若いほうが大きい。経験を蓄積してゆくうちに、ビジネススキルだけでなく、何より器を拡大できるのである。

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